歯磨きペーストについての事実④

表参道のパルフェクリニック・医科歯科 で、顎関節症の治療と運動機能向上のための顎位決定を担当している歯科医師です。

2023年12月に公開している『歯磨きペーストについての事実』なのですが、緊急で続きを書きたくなったので、お付き合いください。

何をそんなに・・・と思われたかもしれません。ボクもこのシリーズはひとまず完了と思っていました。ところが、2024年2月10日にTVのお昼番組から流れてきた話にびっくりしてしまい、皆さんにお伝えしなければと思ってしまったのです。

このシリーズの①で「ペーストは少しだけにするのか、たくさん付けてもいいのか」問題と、「食後すぐに磨いていいのか、悪いのか問題」をお話ししましたよね(忘れてしまった方は過去のコラムを見てもらえると助かります)。

で、その件でまた話が出てきたんです。今度は「歯磨きペーストはほんの少しで十分に磨けてきれいになるから付けすぎないでください」「食後直ぐは、歯の表面が賛成に傾いていて柔らかく傷つきやすいので、しばらく時間を空けてから磨きましょう」ってことでした。

「え~~~~!また変わったのォ~~~」って思っちゃいました。
その他には「歯ブラシを縦に動かすようにしましょう。電動歯ブラシは動かしてはダメですよ、当てるだけにしてください。フロス・オア・ダイってアメリカでは言われてきたのでフロス使いましょう。歯間ブラシも効果的です。歯に歯ブラシを押し付ける圧力は2~3g程度にしておきましょう。・・・」と色々。

ほらほら、大昔からの注意と同じになっちゃってます。
1990年に公開された『プリティウーマン』という映画がありますよね。リチャード・ギアが演じるニューヨークから来た「ウォール街の狼」と呼ばれる実業家エドワード・ルイスと、ジュリア・ロバーツ演じる高校中退でストリートガールになりたてのヴィヴィアン・ワードとが、ビバリーヒルズで繰り広げる「白馬の王子さま」「玉の輿、シンデレラ」ストーリーですね。

詳しい内容はWikipediaで調べてもらうか、DVDなどで見てもらえばいいのですが、この映画にはアメリカ人がマナー、エチケットとする、お口の習慣のシーンが出てくるんですよ。エドワードとヴィヴィアンがホテルで過ごすときに、ヴィヴィアンが一人でバスルームに消えるんです。エドワードは「やはりコールガールは薬物なんかをやってるんだな」と思って、怒ってドアを開けるんです。すると目に入った光景はヴィヴィアンがフロスで丹念にお手入れしている姿でした。ホテルのペントハウスでイチゴとシャンパンでくつろいだ後、ベッドに入る前に「お口の手入れ」をするんです。エチケットとして当然。

エドワードは疑った自分を恥ずかしく思います。同時にヴィヴィアンがとても気になってしまうんです。そこからのシンデレラ・ストーリー。では思い出してください。今から34年前のアメリカ。コールガールをしていても、物を食べた後はフロスを使うんです。2024年の現在、「当たり前」になっていないとですよね。

もう、映画ついでにお話ししましょう。皆さんは『トップガン・マーベリック』はご覧になりましたか?そのオリジナル版『トップガン』でのシーンです。1986年制作の映画です。今から38年前の映画です。血気盛んな若者たちがお互いに罵り合っても当たり前の強気なパイロットたち。その若者たちを黙らせる一言、それが「お前、口臭いぞ!」ですよ。言われたらもう、自分の域が気になって「口バトル」どころではなくなります。最高に言われて嫌な言葉、傷つく言葉なんですよ。

どうですか。34年も38年も前の昔から「当たり前」だったお口の手入れ。ハリウッド映画には結構お口の手入れのシーンが散見されます。歯並びだってかなり古くから当たり前になっているし、それは現在まで連綿とつながってきている「当たり前」なんです。

ハリウッド・スターやセレブ達はもう「矯正するのが当たり前。子供の頃から矯正をしてもらえないと、きちんとした家の子だと認められない」なんてレベルはとっくに超えてしまっているんですよ。今は「矯正を〇回目なんだ」っていうのがスタンダードなんです。生涯で5~6回、歯並びを治すというのが当たり前なんですよ。だからこそ透明なマウスピース矯正が早くから浸透し、ワイヤー矯正でも葉の裏から行ったり、ブラケットやゴムをカラフルにして少しでもおしゃれに見せようとしているんです。だって1回の矯正に平均2~3年を費やすとしても、トータル12年~18年は矯正装置を付ける計算になります。そりゃあ長い付き合いになりますよね。36歳の人なら、それまでの人生の1/3~1/2ですよ。もう少し年齢を重ねていたとしても相当な割合で矯正と付き合っているんです。であれば、目立たないマウスピース矯正に需要が集中しますよね。

本当に、そんなにしてるのかって?あのキアヌ・リーブス。『マトリックス』の頃の映画を見ても歯並びが悪いようには見えませんよね。でも今、人生6度目の矯正治療中だそうです。矯正は骨格が変化するとまた必要になる。生活習慣が変わればまた必要になる。そう考えていた方が良さそうですね。「やらないとどうなる?」それは年を重ねた方々の口元に注意してみましょう。段々、下の前歯が見えなくなるかみ合わせになっていませんか?段々と前歯も含めて隙間が出来ていませんか?虫歯じゃないのに物が挟まると言ってませんか?

そういうことに早くから気づいて対処しているのがアメリカの人たちです。イチゴとシャンパンを口にした後、30分待ってから歯を磨いてますか?出来るなら、食べた直ぐ後に、力を入れず(でも入っちゃうという人は柔ら目のブラシにしてみるとか)、研磨剤が入っているペーストはごく少な目に出し、防腐剤のパラベン含有のものは避け(使用期限は短いですが)、舌磨きとフロスを加えてお口の手入れしてみることをお勧めします。

でも、どうしても「そんな暇がない」とおっしゃるあなた。夜寝る前と朝起きてすぐ(朝食前に)磨いてみることから始めましょう。なんだかんだと言っても、お口のばい菌が一番増えるのは寝ている間なんですから。だから睡眠の前後が歯磨きを欠かせないタイミングと覚えてくださいね。

では、またクリニックでお会いしましょう。