眠っている間に
呼吸が止まる病気

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

当院の「医科歯科連携」による睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療

当院は、同じクリニック内に「医科」と「歯科」がある医科歯科クリニックです。通常、歯科では、他の病院で診断を受け、診断書を持ってきた患者様に対して、歯科領域での治療を行うのが一般的です。この場合、ドクター間での連携が取りにくかったり、患者様としても2つの医院を行ったり来たりといったデメリットもありました。しかし、当院では、まずは院内の医科で「検査」を受けていただき、その後、内科医による「診断」、治療を歯科で行うことになった場合には、即、歯科で治療を開始できる体制となっています。つまり、医科での診断内容によって、同じクリニック内にある「医科」で治療を行ったり、「歯科」で治療を行ったりといったことがスムーズに行えます。また、医科歯科クリニックのため、保険診療で機械の貸し出しも行っています。

当院では「根本原因」にアプローチする睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療も

基本的に睡眠時無呼吸症候群の治療は、歯科では「スリープスプリント」「ソムノデント」「サブリンガルプレート」などによって気道が通るようにもっていったり、医科では「CPAP(空気を送り込む機械)」を使用して治療を行います。これらは「対処療法」的な治療となります。しかし当院では、検査の結果次第では、「根本原因」にアプローチする治療(かみ合わせの治療や、歯科矯正によって気道が通るようにする)にも対応しています。

そもそも睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時に無呼吸や低呼吸が発生

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まる無呼吸になったり、もしくは浅い・弱いなどの低呼吸になったりする病気です。英語ではSleep Apnea Syndromeとなり、その頭文字を取り「SAS」とも呼ばれており、日本における潜在患者は約300万人ともいわれています。10秒以上無呼吸や低呼吸が続く状態が1時間に5回以上認められ、日中の眠気や中途覚醒、倦怠感などの症状がある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

突然死をもたらす危険性も

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の怖い恬として、睡眠中に体へさまざまな負担がかかることです。その最たるものが、心臓への負担です。SASを放置すると、心臓に大きな負担を与え、冠動脈疾患や心筋梗塞、脳梗塞などの発症につながり、突然死のリスクも高まります。

治療可能な病気です

一見、怖い病気ですが、SASは治療方法が確立しています。ただし、放置をすることは突然死や眠気による事故などを引き起こし、自身のみならず他者の命も脅かす結果を生みかねませんので、早期発見・早期治療が大切になります。

こんなに怖い睡眠時無呼吸症候群 (SAS)

睡眠時無呼吸症候群で起こるかもしれないリスク

1. 突然死

重症睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の死亡率は健常者の「2.6倍」です。

2. メタボ

重症睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の「49%」はメタボリックシンドロームです。

3. 交通事故・労働災害

重症睡眠時無呼吸症候群患者(SAS)が交通事故を起こす確率は一般ドライバーの「2.5倍」です。

4. 高血圧

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)が高血圧の原因に。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の「約50%」は高血圧を合併しています。
・中年男性の高血圧患者のうち「30%」が睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は高血圧にも効果があります。

5. いびき

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)はパートナーのQOL(生活の質)にも影響があります。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の「90%以上」は習慣的にいびきをかく
・習慣的にいびきをかく人は糖尿病リスクが2倍です。
・習慣的にいびきをかく人は高血圧リスクが「1.5倍」にも。
・習慣的にいびきをかく人は心血管疾患のリスクが高くなります。

6. アルコール

飲酒は睡眠時無呼吸症候群(SAS)を悪化させます。

7. タバコ

喫煙者は睡眠時無呼吸症候群(SAS)リスクが高くなります。

8. 脳血管障害

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者は脳卒中のリスクが高くなります。
・CPAP療法は脳卒中の再発リスクを軽減します。

通常の呼吸(気道が通っている)

SASの呼吸(舌が沈み気道を圧迫)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と全身疾患

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と「糖尿病」

SASの重症度が増すに連れ、糖尿病の合併割合が高くなります。SASを合併していると糖尿病の発症リスクが1.62倍になることが報告されています。(Am J Respir Crit Catr Med 2005;172:1590-1595)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と「高血圧」

米国で一般住民を対象に行われた研究により、SASと高血圧には明らかな関連が示されました。4年後に高血圧を発症するリスクを調査した結果、SASによる発症リスクは、健常人の約1.4~2.9倍になるという研究結果でした。(Hypertension 2001:19:2271-2277)また高血圧の患者で、降圧剤などの薬の効果がでない状態を「治療抵抗性高血圧」と言います。 この治療抵抗性高血圧と睡眠時無呼吸症候群(SAS)が高率で合併することが明らかになっています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と「心疾患」

心房細動の発症頻度がSASを合併していない場合とSAS合併の場合と、2倍以上もリスクが高いことが報告されています。(J Am Coll Cardio 2007;49:565-571)別の研究では、重症SASの場合、SASではない人に比べて夜間の心房細動の発生頻度が4倍以上高かったと報告されています。(Am J Respir Crit Care Med 2006;173:910-916)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と「脳卒中」

脳の血管が狭窄して詰まる脳梗塞、血管が破れて出血したりする脳出血は、後遺症として麻痺や言語障害が生じやすいとされています。睡眠時無呼吸症候群(SAS)重症例では脳卒中・脳梗塞発症リスクが3.3倍になることが報告されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査

スクリーニング検査

ウォッチパッドは、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査に用います。自宅で睡眠状態を測定します。ウォッチパッドでは、2つのセンサーを指先と喉元に取り付けて計測します。指先のセンサーで血液中の酸素の状態と脈拍数を測定し、睡眠中の無呼吸を予測し、喉元のセンサーでいびきや体位を察知します。

簡易検査

自宅でも取扱い可能な検査機器を使って、普段と同じように寝ている間にできる検査です。手の指にセンサーをつけ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があるかを調べます。多くの場合はまずこの簡易検査から行ないます。 当院では検査機器を有料でお貸出ししています。

機器の貸し出しについて

簡易的な検査機器を1~2晩お貸しします。自宅でこの装置を付けて眠っていただきます。さらに詳しく別診断する場合は提携医療機関にて入院検査をご紹介することがあります。

精密検査(PSG検査)

簡易検査よりも詳しく、睡眠時の呼吸の状態を調べる検査です。終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と呼ばれ、専門の医療機関に入院して行う検査です。体に多くのセンサーをつけますが、痛みはありません。いつも通りに寝ている間に検査は終了します。仕事などへの支障が少ないよう、仕事終りの夜に入院して検査をし、翌朝出勤前に退院できるよう配慮されている医療機関も多くあるようです。PSG検査の結果は、医師や専門の臨床検査技師などがそれぞれのデータを見て最終的に判定します。事前に、時間、持ち物、費用等はご確認ください。

歯科における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、治療を行います。治療内容は、「歯科」では、「マウスピース(スリープスプリント)」を装着して頂くことにより治療しますが、特に重症な方は、「医科」にて、「CPAP(空気を送り込む機械)」を使用して治療を行います。

モノコック型スリープスプリント【保険適応】

医科で、医師による診断書を出してもらった方は、歯科にて、保険適応のマウスピース(モノコック型)の作製が可能です。

長所

・健康保険適応のためコストが安い
・下顎の固定が確実である

短所

・細かい調整ができない
・調整は歯科医師しかできない
・使用時の不快感が大きい
・装着時 開口はできない

ソムノデント MAS

患者さん個々の歯列にあわせてカスタムメイドされた装置です。上下歯列にフィットするプレート部分とその形状で特許を取得した独自のウィング部分で構成され、装着時の顎位の動きを規制しながらも、患者さんが自由に口をあけるこことができるように設計されています。上顎臼歯部には顎位置を微調整するためのスクリューが装備され、装着後の調整も簡単におこなうことができます。

長所

・容易に細かい調整が可能
・顎が動かせ開口も可能なため、使用感が優れている

短所

・健康保険適応外

SPP(スーパーパラタルプレート)

SPP(スーパーパラタルプレート)は、上の歯の根元に装着される装置で、上の歯の内側における左右の差を解消でき、舌が上の前歯の根本部分に自然に配置されやすくなります。装置は違和感を最小限に抑えるように設計され、表面は滑らかに研磨仕上げされていますので、ザラつきを感じることはありません。

口を閉じているとき、舌の先がスポットに軽く触れることが理想的です。しかし、時折舌が低い位置にあるか、喉の奥に寄ることがあり、これが舌の筋肉に影響を与え、姿勢が悪くなる可能性があります。さらに、食事時の咀嚼や正しい呼吸にも悪影響を及ぼすことがあるため、当院ではSPPを使用して、舌の位置を調整する治療を推奨しています。 

SLP(サブリンガルプレート)

SLP(サブリンガルプレート)とは、日本歯科大学名誉教授の丸茂義二先生が考案された、歯ぎしりや食いしばり・睡眠時無呼吸症候群などを効果的にコントロールするための装置です。SLPはマウスピース型ではなく舌の下に入れて使用するタイプの装置ですので、睡眠時だけではなく、日中も装着したままで過ごすことができます。

睡眠時無呼吸症候群の大きな原因として、睡眠時に顎や舌が後退しすることで気道(咽頭腔)が狭くなり、呼吸が困難になってしまうということが挙げられますが、SLPを入れることで舌が上へ持ち上がり、前方へ出ると同時に下顎もわずかに前方へ移動しますので、結果、気道を確保することができるのです。また、舌の位置を正しい位置に修正することにより、食いしばりや歯ぎしりを減弱できる効果が期待できるほか、体の重心バランスが変わることで姿勢が改善されたり、唾液の分泌を促進することで虫歯リスクの軽減、ドライマウス防止に繋がる効果も期待できます。

長所

・SASの他、食いしばりや歯ぎしりの防止にも有効
・一時的な対処療法ではなく、本来の舌の位置を学習することで半永久的に効果を維持することができる
・口呼吸から鼻呼吸への改善がされやすく、免疫力が増す

短所

・健康保険適応外なため 高価

「根本原因」にアプローチする治療

かみ合わせの治療

かみ合わせが深くなりすぎていて、口腔内から舌がのどの方に落ち込みやすくなり、その結果、無呼吸が誘発されているようなケースの場合、かみ合わせを調整することで気道が通りやすくなり、根本的に睡眠時無呼吸が改善されることがあります。当院では、先進の検査機器を使用して、気道の状態も確認し、精密な治療を行っています。

歯科矯正

不正咬合によって、口腔内から舌がのどの方に落ち込みやすくなり、その結果、無呼吸が誘発されているようなケースの場合もあります。そのような場合には、歯科矯正によって、気道が通りやすくなり、根本的に睡眠時無呼吸が改善されることがあります。経験豊富なドクターが治療に当たります。